2006年04月24日

大野信一朗ロングインタビュー #1

インタビュー:日本フェザー級王者 大野信一朗編「あきらめなくてよかった。」

2006年3月26日、後楽園ホールが割れるような声援に包まれていた。5ラウンド目の開始ゴングが響いたとき、誰もが目の前に迫っている歓喜の瞬間を想像し、興奮を抑えきれなくなっていたに違いない。「オーノ! オーノ! オーノ!」大声援が続く。目の前にいたマスクマンたちは全身で声援を送っていた。今にもリングになだれこみそうな勢いだ。判定が読み上げられていく。すでに泣きそうになっている者がいる。

「勝者、大野!」

泣き出す者、両手を掲げて飛び上がる者、抱き合う者、応援席は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。39歳の新チャンピオンが誕生した瞬間であった。

後楽園ホールの感動から2週間あまりたったある日、大野信一朗に話を聞くことができた。悲願の王座獲得という大きな仕事を終えたからか、この日の大野は終始リラックスした表情で、1時間以上に渡って語ってくれた。

クラス最強と謳われた菊地剛介選手との日本フェザー級タイトルマッチが決定しても、大野に対するメディアの対応は冷めていた。しかも菊地選手がTITANS 3rdで他団体の選手と戦うことが決定してからというもの、メディアの興味はもっぱらTITANSへ。大野とのタイトルマッチに触れることはわずかであった。

「雑誌とかみても、俺の試合なんてまったくないって感じだったでしょ。菊地・TURBO、菊地・TURBOじゃないですか。ま、1社くらい通な人がいてもいいんじゃねーのかなーと思ったんですよね。でもまあ俺もファンだったらそっちに目をむくだろと思ったんですけど」

そう言いながら大野は自虐的に笑った。ここでは存分にご紹介しようと思う。

■今の気持ちを語ってください

【写真】笑顔で答える大野−これまでのキック人生で、タイトルを獲得した日が一番うれしい日ですよね。

うれしい日ですよー! そう。あきらめなくてよかった。辞めなくてよかったと思いましたね。何回か辞めようと思った時があったんですよね。前に菊地に負けたときもそう思ったんですよね。

−判定を聞いた瞬間はどんな気持ちでした?

正直言って俺は自分でも(勝てるなんて)考えてなかったですし、負け方のほうを考えてた感じですね。俺、1回目のはなんとなく負けてる感じだったんですよ。何にも手を出さないし。

【写真】判定の瞬間、思わず驚きの表情を見せる大野

判定の瞬間、思わず驚きの表情を見せる大野

2年ぐらい前なんですけど、1回目に菊地とやったとき、あのときはもう教えてくれるタイ人がものすごく怒ってたんですよ。「もーお前あんなミット持ってやってたのに、なんで蹴んないんだ蹴んないんだ」って。俺も蹴りたいんですけど体動かないし、っていう感じだったんですね。で、まぁああいう試合でなんとなく負けちゃってて、結局ボコボコボコボコとロー食らって、ナンもいいこともなく、いいとこもなく終わって。

周りにも、前に出ないともう勝てないって言われてたんですよ菊地には。ローで倒されるんだったらパンチで気持ちよく倒してくれたほうがいいよな〜なんてことは考えてましたね。そして前のめり風に倒れるんだったら、よくやったってみんなも言ってくれるんじゃないかなんて考えたこともありました。

−これまでで一番辛かったのはどんなときでしたか?

【写真】辛かったときの気持ちを語る大野試合もあまり組まれなかったし、いろいろあったし、ここんとこずっと辛かったですよ。いや、贅沢な悩みかもしれないですけど、俺、ずっと1位になっちゃってたじゃないですか。ってことはタイトルマッチできなかったら、後で「チャンピオンなれなかった」って言われるんですよ。なれなかったって形じゃないですか。デビューしたのも31だったし、5回戦くらいで辞めちゃえば、「タイトル」なんて言われないわけじゃないですか。そっちのほうがよかったのかな? って正直ちょっと思いましたね。チャンピオンなれねーじゃねぇかよなんて言われちゃうんだったら、タイトルが見えなかったら、こんな思いもしなくてよかったのかなと思いましたよ。

−勝った日の晩というのはどのように過ごされたんですか?

あの後、来てくれた人たちが飲んでるところにいって、挨拶しました。さすがに僕は疲れちゃって飲めなかったですけどね。ご飯も食えなかった感じで。最近脱水症状が……やっぱ年なんすかね?(苦笑) 脱水症状なのか、終わったあと結構食欲ないんですよ。2時間くらいしないと。夜12時くらいになってやっとご飯が食べたいくらいかなって感じだったんで。ま、別にご飯もいらなかったですけどね。もうあんときは。ずっとコーフンしてた感じですよ。えっ。夢なのかな?って感じですよ。でもベルト持ってんだよな〜?って(笑)

−胴上げもしてもらいましたね!

はい。今でもそうですけど。夢じゃないかと思いますね!

−まだ実感してないんですか?

さすがに今は実感してますよ。ちょっとどこかに行って知り合いに会うと、「おめでとうございます」なんて言ってもらえるし、そういうのは純粋にうれしいです。

【写真】デビューはあっちのほうが先なのに、と笑う大野。でも勝ててほんとによかったですよ。だって菊地はビックネームなんで。ただ「菊地がベテラン大野に負けた!」みたいなこと言われるみたいですけど、ベテラン大野じゃないんですよ。菊地のほうが俺より先にデビューしてるんだから! 年だけだよね(大笑) あるブログなんか親子対決って書いてありましたもん。そういえばあの親子対決どうなったの?みたいな。

−ブログはよくご覧になるんですか?

勝ったときはうれしいから自分の名前がでてるのかなって見ちゃうわけですよ。そういうときに限って格闘ジャンキーの人から電話があって、ベルト撮った写真送ってくれとかいって。誰か(写真)持ってないの?っていったらそんときに限って誰も持ってない!(笑) しょうがないから自分で撮って送ったり。そんな感じで自分の名前でてるのは特に見てましたよ。ビデオがなかなかこなかったんで写真とか。普段なら負けたときのビデオは1年か2年くらいしてみたんですよ。今は毎日見るくらいの感じですよね。ほんとに。

−堪能されてますね。

すごい堪能してますよ。ほんとね、3日目くらいまではね、もう見るたんびに俺も泣けてくる感じですね。

−判定の瞬間みんな泣いてましたよ!

一番泣いてたのは俺かもしれないですねー。

−あの試合はちょっとしたドラマを見た気分になれました。

そう言っていただけるとうれしいです。

【写真】応援してくれたマスクマンたち
		  に囲まれながら、思わず男泣きする大野

ずっと応援してくれたマスクマンたちに囲まれて、思わず男泣きする大野。
大野にとって彼らは欠かせない存在。だがその正体は明かせないという(笑)

つづく

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posted by 管理人 at 04:11 | インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする