「目がすごい充血してますよ?」
そういわれて顔を上げると、もう一人すごい充血した人がいた。
「ぜんぜん人のこと言えないじゃないですか……」
と言い返しながらかろうじて抵抗を試みるものの、出掛けの元気はどこへやら。気がつくと愛用のカメラを奪われていたが、すでに極辛地獄に同化された管理人にとって「抵抗は無意味」であった。しかもいつの間にかあちらのお皿は空になっている。
これを完食ですか……!!!
普通なら「すごーい♪」となるところだろうが、まだ半分ほど残っている管理人にそんな余裕はみじんもない。途中で「残しておいたニラ卵炒めを端休めに食べたほうがいい」とか、「カレー食べるためにもっとビールを頼むか?」と気を使っていただいたのだが、すでに自分との戦いモードになっていた管理人は半分上の空。「無理しなくていいからね〜」と言われても、食べ物を残しちゃいけないと言われて育った身としては、完食を目指すしかない。とうより、悔しい!
カレーを食べて悶絶中。
これまでの人生でこんなにゆっくりカレーを食べたことはない。
再びスプーンを口に運び、目を閉じて地獄の炎に耐える。食べるために水代わりの勢いで飲んだビールもいけないのかもしれないが、無常にも呼吸は荒くなり、段々手に力が入らなくなってきたのがわかった。しかもお腹いっぱい。調子にのって食べ過ぎたのかもしれない。さらに不幸は重なる。閉店時間が迫っていることも判明。悪戦苦闘している管理人に、カウンターの向こうから大沢氏が優しく微笑みかける……。
残り4口、いや、3口程度にまで到達したところで、閉店10分前。さすがに閉店時間までねばるわけにはいかない。残り全部を口に運ぶまであと20〜30分はかかると思われたので、無念にも白旗を掲げざるを得なかった。
「初めてにしちゃぁよく食べたほうだよ」
と言われたが、そんなねぎらいの言葉もむなしく心に響くだけ……。負けは負けなのだ。いや、ちょっと待て。管理人は単に食事がしたかっただけなのだ。いつから勝負になったのだろう? 特に最初から勝負をしていたわけではないのだが、途中から戦っている気分になっていたのは紛れもない事実。
店を出るとき「ご苦労様でした〜♪」と言われた。そんな台詞、普通の店ならありえない。こうして極辛カレーの恐ろしさをいやというほど‘味わって’来たのであった。
店を出る前に新妻塾長が大沢氏にこう言っていた。
「いや〜今日のはパンチが聞いてました! いつもなら後からじわじわ効いてくるんだけど、今日のはいきなりストレート食らった感じっス!」
管理人は疲れた笑みを浮かべるほかなかった。
◆
その1週間後、管理人はひとりで再び大沢食堂のドアを開けた。決して極辛カレーのリベンジではない。いきなりすべてを飛び越えた極辛カレーに挑んでしまったので、普通のカレーを食べてみたかったのだ。オーダーしたのは中辛カレーと前回気に入ったスタミナの単品。カレーの色が違っていた。今度は落ち着いて味わうことができた。店長の手が少しあいたところで藤本会長からの伝言を伝え、軽く歓談させていただくことができた。
こちら↑は中辛カレー。せっかくなので、極辛カレー↓と並べてみよう。
店内を見渡していると壁に貼られたメニューにこんなものが。
一口極辛 100円
「……(汗)」
それでよかったんじゃないかと思っても後の祭り……。
いきなり最強のカレーに挑む。これもまた目黒スタイルなのだろうか。サイト管理人といえども油断してはいけない。教訓である。
これから極辛カレーに挑戦してみたいと思う諸君、一口極辛を試してから挑戦するといいだろう。食べるからにはくれぐれも残さないように。
謝辞:新妻塾長、ご協力ありがとうございました。
▼大沢食堂
文京区本駒込2-1-5
白山5丁目バス停前(旧白山通り)
都営三田線 千石駅A1出口から左へ徒歩3分程度
営業時間:
昼11:00〜14:00(ラストオーダー 13:30)/ 夜18:00〜22:30(ラストオーダー 22:30)
定休日:日曜・祭日