2005年05月26日

日本ライト級王者 石井宏樹編

チャンピオンに聞く 日本ライト級王者 石井宏樹編

 2005年3月20日、後楽園ホールで開催された「MAGNUM 7」の控え室。奥で準備を整える姿が見えた。張り詰めたような緊張感が漂っているかと思っていたのだが、写真を撮らせていただこうと「今日ベルトは」と聞くと「ありますよ〜防衛戦ですから!」と明るい返事が返ってきた。まさに「平常心」という言葉がぴったり。それもそのはず。2000年1月23日に日本ライト級王座を獲得してから、すでに5年王座を守り続けているベテランなのだ。その日再び王座を防衛し、防衛記録はまた1つ増えて「6」になった。

石井宏樹選手のプロフィールはこちら

■キックボクシングを始めた理由

  キックボクシングを始めたのは15歳のときだったという。現在までの戦績は43戦28勝(13KO)7敗8分。「石井宏樹」をキーワードに検索すると「KOアーティスト」「日本No.1のテクニシャン」「天才キックボクサー」「スーパーテクニシャン」といった形容詞を目にすることができる。いずれも技のコンビネーションの美しさを称えたものである。しかも2002年から2003年までに樹立した連続7KOという実績と、6度の王座防衛という記録は、そう簡単に打ち立てられるものではない。そもそもどうしてキックボクシングの世界を選んだのだろうか。

−キックボクシングを始めたきっかけはなんだったのでしょうか

石井:きっかけはダイエット感覚ですね。(中学生時代は)ぽっちゃりと太ってましたんで。あと、男だったら強いほうがいいなと思って。ずっと野球やってたんで、高校に入って野球部に入ろうと思ってたんですけど、その高校が結構野球で強いところで。それまで本格的に野球やってたわけじゃなかったんで、もしかしたらついていけないかもしれないと思ってたところ、近所にこのジムがあったんで、高校に入ってすぐに通い始めたんです。学校から帰ったらまっすぐジムに。

−ダイエットしながら自分がチャンピオンになるなんて思ってました?

石井:全然思ってないですよ! プロがあることも知らなかったんで。で、練習してて、だんだん痩せてって、腹筋が見えてくるようになったらすごい楽しくなって。とにかく毎日通ってたからみんなに可愛がられたんですよ。そのうちライセンスを取ってみようかなと。取ったら取ったで試合したくなって。

 とにかく毎日のトレーニングを楽しんでいたという。はじめた当初は「野球でいえば、キャッチャーと思われる体型だった」という体は、現在では美しいほどに絞り込まれ、チャンピオンベルトがよく似合う。

インタビューに答える石井宏樹選手
黒いガウンで入場する石井選手
ダイエットが目的だったとは意外だが、親近感がわく話である。 テーマ曲に合わせて入場。曲はスペンテ・レ・ステッレ。ガウンの黒は好きな色だ。

■モチベーションの維持方法

 全身を駆使する上にフルコンタクトのキックボクシングは過酷なスポーツだ。キックボクシングの試合が3分3ラウンドなのは、そのハードさゆえのルールなのである(ちなみにムエタイは3分5ラウンド、インターバルは2分) また、ウェイトコントロールも避けて通れない。試合が決まると約1ヶ月前から減量が始まり、約6〜7kg落とすという。トレーニング・減量・試合・またトレーニングの繰り返しだ。

 石井選手の場合、キックボクシングを中心に生活がまわっているらしい。それについて聞くと、「前は仕事もしていたけれど、今はキックボクシングのことだけ考えていられるのでうれしい」とサラリと答えた。好きでなければ続けられないのは当然のことだとしても、トップを走り続けるためのモチベーションはどうやって維持しているのだろうか。

−練習に対する集中力の高め方とか、モチベーションの維持方法、気持ちの支えにしてることってありますか。

石井:最終的な目標はまぁ試合で勝つこと。それに向けて毎日練習してるんですけど、やっぱりずーっと毎日同じことの繰り返しじゃないですか。だから自分の中に仲間とかの存在が大きいですね。終わった後にどっかおいしいもん食べに行こうよとか、やっぱりそういうのがあるから。いい試合をしたら行ける。ほんと、ご褒美じゃないですけど。だから仲間を大切にしたいですね。

−試合が終わって真っ先にしたいと思うことってなんですか?

石井:やっぱ飲みに行くことですね。そしておいしいものを食べる(笑)

−お酒は結構飲まれるんですか?

石井:お酒好きなんで。やっぱ1ヶ月前からはもう一切絶つんですよ。それも終わったら飲めるって言う、やっぱこれもモチベーションの1つかな。やっぱり怪我とかしちゃうと飲めないし、負けちゃったらおいしいお酒じゃないですし。試合後のダメージによってはやっぱり飲めないし。

 「仲間の存在」これが石井選手にとってエネルギーの源になっているようだ。いい試合ができなければおいしいお酒が飲めない。だからいい試合をする。そして勝つ。そして終わったら仲間たちと語らい、おいしいお酒をのみ、おいしい食事をする。非常に単純明快だ。さらに、もしキックボクシングをしていなかったら、こんな喜びを感じることはなかったんじゃないかとも。

 お酒は特に焼酎(芋)が大好きで、ビールを飲んだら後は焼酎らしい。またグルメ本も好きで、試合前になると必ず行きたい店をチェックするのだとか。「減量のときに目の前で食べられたり飲まれたりするのは、別に全然だいじょぶなんですよ。終わったらその分自分も食べれるんですよ」と語りながら見せた嬉しそうな表情が印象的だった。

 減量というプロセスを経るからこそ、おいしい食事へのこだわりも人一倍あるに違いない。芸能人のグルメ番組より、試合後のキックボクサーを起用したグルメ番組なんかあると面白いかもしれないなどと考えてしまったほどだ。

インタビューに答える石井宏樹選手2
MAGNUM 7での石井選手
「もし焼酎の差し入れがあったら嬉しいですか?」 「嬉しいですね〜!」 戦い、勝つ。そしておいしい食事と仲間が次へのエネルギーになる。

■世界に認められる選手を目指す

  MAGNUM 7におけるマサル選手(トーエル)との試合は判定(3-0)勝利となった。「マサル選手も粘りましたね」というと「みんなに言われるんですけど、粘らしてしまったんですよね」と答えた。「もう3戦目なんで、大体動きも分かっているし、すごく余裕もあった」だから本当はKOしたかったのだという。

 KOといえば、7連続KOの後、ドローが続いている。やはりKOを意識するかと聞くと「KOはしたいですけど、やっぱり自分の納得いく試合を毎回できるように努力してます。まぁ、KOして倒せばお客さんも喜んでくれると思う。判定でも自分の練習したことがすべて出て、納得できれば、お客さんも必ず喜んでくれると思ってるんで」という答えが返ってきた。

 観客はどこかでドラマチックな展開を求めてしまう。ただ勝てばいいというものではないというのが難しいところなのだろう。「アーティスト」と称されるほど、彼の自在なコンビネーションには定評がある。しかし今の自分に「全然満足してないですよ」と断言した石井選手。得意技は「ロー」だが、現在磨きをかけている技があるという。

−得意技としてはローキックですよね。

石井:ローと、最近ではもう肘を練習してます。切れる肘も大事なんですけど、今は倒せる肘を練習しています。やっぱり肘がある選手ってすごい怖いと思うんですよ。なかなか入れない。タイ人と対戦したときに自分もそういう風に思ってたんで、その怖さを知ってから、肘を自分のものにしようかなと。

−コンビネーションのすばらしさに結構定評があるんですが、普段の練習の中で、自分のなりのオリジナルのコンビネーションを訓練したりするんですか。

石井:まぁそうですね。ひらめいたりしたときとかは、練習で出してみたりとか、まぁフェイント1つにしてみても、コンビネーションの世界なんで。うちはフェイントとかもすごく力を入れているんですけど。

−これからそこに、さらに肘も加わるわけですね。

石井:そうですね。コンビネーションの中に肘をいれるっていうのは、すごく難しいことなんですけど、それができれば怖い武器になると思うんで。

現在26歳。ファイターとしては脂が乗る年齢だ。最後にありきたりではあるが「目標」を聞いてみた。

−今後戦ってみたい相手とか、ライバル視している人っていうのはいるんですか? また、今後の目標はありますか?

石井:世界に認められる選手になりたいですね。ライバルは、誰っていうんではないですけど、やっぱり世間に強いといわれている人とはやってみたい。そんな相手に勝てば、日本だけではなく、世界に認められる選手になるんじゃないかな。

インタビューに答える石井宏樹選手3
防衛に成功した石井選手
「世界に認められる選手になりたい」と語る。 防衛戦に勝利。左は藤本会長。右は新日本キックボクシング協会 伊原会長。魔裟斗選手のセコンドでもおなじみだ。

 「倒せる肘」を組み込んだ新たなコンビネーション。今後の試合展開もますます目が離せなくなりそうだ。

TVの取材に答える石井選手

2005年3月20日、MAGUNM7の試合後

 

聞き手:鈴木麻里子、高橋正信
テキスト:鈴木麻里子
写真:鈴木麻里子
posted by 管理人 at 00:00 | インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする